2019-01-01から1年間の記事一覧
「夕さん 四話」 物部俊之 初秋のやわらかな風、古びたアパートの二階には不釣り合いに大きな窓。青空に染まる、干した布団のこちら側に、膝から下の足だけが乗っている、半透明の夕さんだ。干している布団の上に仰向けに寝そべっているから、膝から爪先だけ…
「砂族」 白石かずこ。 残念ながら、書肆山田内にて検索してみたけれど出てこなかった。1982年は古すぎるのだろう。私が読んだのは、高校生、もしくは、卒業してすぐのこと。いまはなき駸々堂にて購入した。レコードにジャケ書いというのがある。私は当…
それで野呂栄太郎が獄死したあとで、かれの遺命に従ってぼくが書いたのが『ミケルアンヂェロ』で、あれは伏せ字がないんだ。二字だけイタリア語を使った。それは「フィレンウェは陸軍なくして国を守り、ヴェネチアは海軍なくして繁栄した」というところだ。…